日本小児科学会が掲げる「小児保健・医療提供体制2.0」では、小児医療の新たな課題への向き合い方が示されている。大分県内の地域で実践する是松聖悟氏(中津市立中津市民病院)に話を聞いた。
近年、感染症が減少している一方で、在宅医療やメンタルケア、貧困への対応が求められています。こうした新たな課題に立ち向かうためには小児科医、医師会を含め、行政・福祉・教育の分野と連携すべきというのが学会の提案です。私の取り組みは最小単位ですが、学会にモデルケースとして認められ、学会のシンポジウムで発表の機会を得ることができました。
大分大では県の委託を受け、2008年から過疎地の若手小児科医・産婦人科医のサポートや、子どもを産み育てやすい地域にすることを目的とした事業を始めました。小児科分野の担当となった私は、大分市・別府市を除く、僻地を中心とした市町村の施設を巡回することになりました。昨年度に大学を退職しましたが、今でも活動は継続中で、2カ月に1回ずつ10施設をサポートしています。
1つは予防接種です。治療しなくても治る子どもがいる一方で、何をしても治らない子どもも少なくありません。こうした事態を防ぐために重要なのは予防接種ですが、07年の大分県のMRワクチン接種率は79.6%。全国最下位でした。そこで、新聞を利用した市町村別の接種率公表、任意予防接種の無料化推進といった活動を始めました。