【司会】 杉本恒明(東京大学名誉教授)
【演者】 山科 章(東京医科大学循環器内科主任教授)
血管が硬くなると収縮期血圧は高くなり,拡張期血圧は下がって脈圧が大きくなる。
CKDでは微量アルブミンの段階で,血管の硬化が進んでいる。
無症状であっても50歳以上で糖尿病があるか喫煙者,65歳以上の全員に,ABIの測定を勧める。
日本循環器病予防学会(旧 日循協)が重要視しているものに疫学研究があります。NIPPON DATA 80もその1つでコレステロール,血圧,年齢,性別,糖尿病の有無から今後10年以内に心血管疾患で死亡する確率が予想できるようになりました。
図1は有名なDzau先生の心血管疾患の連鎖です。高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙,肥満などのリスクファクターがあれば心血管疾患発症のリスクは高くなりますが,いきなり心筋梗塞になるわけではなく,血管機能不全が起こり,次に血管性疾患,組織障害(臓器障害)を起こし,それが進行して末期臓器不全となり死亡します。
リスクファクターからリスクは推定できますが適中率は50%あまりと言われており,血管機能不全を適切に評価できれば,より精度の高いリスク評価ができます。すなわち,血管機能がバイオマーカーになればよいわけです。バイオマーカーとなるためには,早期の段階を反映して臨床応用できることが必要です。また,再現性が良く,精度が高く,簡便かつ低侵襲で費用対効果が良く,市販されていて標準化されており,さらに予後予測ができることが必要です(表1)。何らかの介入をすればそのマーカーは改善し,それに伴って予後の改善につながれば理想的です。
血管機能検査の代表として血流依存性血管拡張反応(flow mediated dilation:FMD),脈波増大係数(augmentation index:AI),中心血圧,脈波伝播速度(pulse wave velocity:PWV),上腕と下肢の血圧から求めるABI(ankle brachial index)などがあります。
最近は再現性が良く簡便な器械があり,上腕動脈にプローベを当ててエコーで血管径の変化を見ます。前腕で血圧+50mmHg程度の圧で駆血すると血液は流れません。5分間駆血した後に駆血を解除すると急激に血液が流れます。血流が増えたときの血管shear stressで,NOが出て血管が拡張します。それを超音波で血管の径を観察して,前値と比較してFMDを求めます。
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