70歳,男性。主訴は失神。便座に座り,排便をしようとしたところ,気を失った。家族の話では,以前にも同様のことが何度かあったとのこと。患者本人は「いつものことだから大丈夫だよ。ほら,ぴんぴんしてるよ」と答え,元気そうに見えた。
排便時の発症であり,神経調節性失神(状況失神)が考慮されやすい。ただし,危険な失神(下記の「見逃し注意!」)の除外は必須である。
まず,本当に失神であったかどうかを確認することが大切である。意識障害ではないことを確認する。てんかんでは,痙攣後に意識障害が遷延することがある(postictal state)。最初の道筋を誤ると間違った診断につながるため,慎重に行う。
失神は突発し,意識は短時間(数秒~数分)で自然に清明となる。5分以上,意識が低下している場合は意識障害の鑑別を行う。
残り3,275文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する