わが国で実施されたJELIS試験において、心血管系(CV)イベントに対する1次予防、2次予防作用が2007年に報告されたオメガ3不飽和脂肪酸 (ω3-FA)だが、近年、そのような有用性を否定する知見が続けて報告されている。本学会で26日に報告されたASCEND試験も、それに連なる結果となった。糖尿病例に対するω3-FAのCVイベント抑制作用は、プラセボと有意差を認めなかった。26日の「HOTLINEセッション2」において、Louise Bowman氏(オックスフォード大学,英国)が報告した。
ASCEND試験の対象は、CV疾患を認めない、40歳以上の糖尿病(1型、2型を問わない)1万5480例である。平均年齢は63歳、男性が63%を占めた。94%が2型糖尿病で、全体の36%がアスピリンを、75%がスタチンを服用していた。
これら1万5480例は、ω3-FA(1g/日)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で平均7.4年にわたり追跡された。
その結果、1次評価項目である「CV死亡・心筋梗塞・脳梗塞/一過性脳虚血発作」の発生率は、ω3-FA群で8.9%、プラセボ群も9.2%で、有意差を認めなかった(P=0.55)。BMIの高低、CVイベントリスクの高低で分けてサブ解析しても、結果は一貫していた。
本試験が行われた背景には、ω3-FAサプリを医薬品の代わりに服用する患者層の存在がある。指定討論者であるChristopher Cannon氏(ハーバード大学、米国)が指摘した。同氏によれば、米国ではスタチンを処方しても購入せず、安価なω3-FAサプリで代用する患者は少なくないのだという。英国における調査でも、成人の31%はω3-FAサプリを摂取していた。 報告者のBowman氏は、ω3-FAサプリを推奨している診療ガイドラインは見直されるべきだと主張した。
さて本試験は「2×2」デザインで、アスピリン100mg/日とプラセボの比較も行なっている。その結果、「CV死亡・心筋梗塞・脳梗塞/一過性脳虚血発作」(1次評価項目)発生リスクは、アスピリン群で、プラセボ群に比べ有意に減少したものの、出血の増加がこの有効性の差を相殺した。Bowman氏の報告に先立ち、Jane Armitage氏(オックスフォード大学、英国)が報告した。
さらに同研究では、アスピリンが発がんリスクに及ぼす影響も検討している。しかし平均7.4年間という長期の観察にも関わらず、発がんリスクはプラセボ群と同等だった。
本研究は、British Heart FoundationとUK Medical Research Councilから資金提供を受けて行われた。
これらの結果は26日、報告と同時に、N Engl J Med誌Webサイトに掲載された。