【持続洗浄を併用した局所陰圧閉鎖療法の有用性】
縦隔炎と胸骨骨髄炎は感染性組織のデブリードマンが治療の基本となる。腐骨化した,あるいは骨髄炎を呈する胸骨をデブリードマンする際に胸骨裏面の骨膜を合併して切除すると縦隔が開放されるため,定義上,縦隔炎となる。一方,胸骨と裏面の骨膜とを分離・胸骨を温存することで従来,縦隔炎と定義されていたものが,胸骨骨髄炎単独となる場合もある。胸骨骨髄炎にとどめることができれば,治療上の侵襲を低く抑えることができる1)。
縦隔炎治療は開放,閉鎖洗浄法(closed irrigation),局所陰圧閉鎖療法(NPWT)など様々な歴史的変遷をたどるが,NPWTの有用性が報告されて以降今日まで,国際的にも多くの施設でNPWTが導入されている。しかしながら,NPWTの成否は感染組織のデブリードマンの程度に大きく依存する。また,縦隔には心血管系が含まれており,デブリードマンには慎重にならざるをえず,両者は時に対峙する。筆者らは,いわゆる洗浄型NPWTにより良好な創部コントロールを得ている。本法は,特に汚染の強い部位や人工血管部に洗浄カニューレを留置することで,持続的に洗浄を行いながら感染のコントロールをめざすと同時に,陰圧を付加することで創傷治癒を促すといった特徴を持つ2)。2017年8月より間欠的洗浄を自動で付加しながらNPWTを行える機器がわが国でも導入され,今後の展開が期待される。
【文献】
1) 榊原俊介, 他:PEPARS. 2017;129:40-50.
2) 榊原俊介, 他:PEPARS. 2015;97:64-71.
【解説】
榊原俊介*1*3,寺師浩人*2 *1神戸大学形成外科 *2教授 *3兵庫県立がんセンター形成外科医長