1 総論:2012年改訂版から2017年改訂版へ
2 右心カテーテル検査による肺高血圧症(PH)の確定診断をより早い段階で実施
3 IPAH/HPAHに対する治療指針・一般的対応・支持療法の改訂
4 左心性心疾患に伴う肺高血圧の診断アルゴリズムを改訂
5 CTEPHに対する治療ガイドラインを改訂
6 小児における肺高血圧について大項目として新規追加
肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)は原因不明の予後不良の難治性疾患であったが,この20年間で診断および治療法が激的に変化した。特に,この数年で新規薬剤や多種多様な投与方法が開発され,非常に活気にあふれた領域となってきている。また,従来では,外科的に肺動脈内膜剝離術を行うしか根本的治療がなかった慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)においては,わが国の研究者が肺動脈バルーン拡張術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)の技術を飛躍的に発展させたことより,本症の治療のアルゴリズムは大きく変化している。このような状況から,肺高血圧症治療ガイドラインを大規模に改訂する必要があるとの声が大きくなり,今回の2017年改訂版1)の発行に至った。
今回の改訂の重要な特徴は,最新のエビデンスと治療選択肢をふまえて,わが国における治療の現状に即した形として,わが国独自の治療指針を含むガイドラインとして作成されたことである。
なお,本ガイドライン発行直前にフランス・ニースで開催された第6回肺高血圧症ワールド・シンポジウム(ニース会議2018)において,PHの診断基準について平均肺動脈圧を25mmHg以上から20mmHg以上に引き下げることを含めて,何点かの重要な提案が行われた。ただし,ニース会議2018での提案事項はまだ一定の見解が得られていない状況であり,本ガイドラインへの掲載は見送られている。今後,欧米のガイドラインの推移を慎重に見守る必要があると思われる。
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