【肺高血圧国際会議2018で示された新診断基準】
肺高血圧症とは,肺動脈圧が上昇し右心不全をきたす疾患である。以前は治療薬がなく予後不良な疾患だったが,近年プロスタサイクリン製剤,IP受容体作動薬,エンドセリン受容体拮抗薬,PDE5阻害薬,グアニル酸シクラーゼ刺激薬といった新規肺血管拡張薬が登場し,その予後は劇的に改善している。
1973年に開かれたWHO国際会議で,健常者における安静臥位での平均肺動脈圧は15mmHgを超えないこと,加齢による影響を加味しても20mmHgを超えないことが確認された。この結果をふまえ,平均肺動脈圧が25mmHgを超えた場合を肺高血圧症と定義した。
2008年の肺高血圧国際会議でこの基準に関する再検討が行われ,平均肺動脈圧が25mmHg以上を肺高血圧症と再定義された。すなわち,以前の定義では含まれなかった25mmHgが,新たに肺高血圧症の基準として含まれることになった。その後しばらくこの基準が用いられていたが,18年2月に行われた肺高血圧国際会議で,肺高血圧症の定義を平均肺動脈圧が20mmHgを超えた場合に変更する提言がなされた。これは膠原病,肺疾患,慢性肺血栓塞栓症で,平均肺動脈圧が21~24mmHgの症例では予後不良であることが根拠となっている。
定義が変わることによって早期に治療介入される症例が増えると予想される。肺高血圧症において早期診断および早期治療は重要であり,さらなる予後改善が見込める症例の増加が期待される。
【解説】
赤木 達 岡山大学循環器内科