【診断が厄介なのは薬物アレルギー(厳密には過敏症)で,日常管理が厄介なのは食物アレルギー】
①薬物過敏症(薬物アレルギーと薬物不耐症)は,被疑薬の使用と症状発現のタイミングから一般にその因果関係を疑うことが容易だが,食物摂取という行為は日常的なので,被疑食物を絞り込むことが難しい場合がある(蕁麻疹などの症状が食物アレルギーなのか,それとも慢性・急性蕁麻疹なのかの区別さえ難しいこともある)。
②食物アレルギーは,いったん被疑食物が明らかになれば特異的IgE抗体検査とプリックテストで証明されることが多いが,薬物過敏症の場合は,被疑薬物が明らかでもin vitro検査(好塩基球活性化試験やリンパ球刺激試験)や皮膚反応試験(プリックテストや皮内テスト)の陽性率が低く(パッチテストは比較的陽性率が高い),直接負荷試験を余儀なくされることが多い。さらに,薬物の場合は検査そのものが危険なため,被疑薬物を「被疑のまま」生涯にわたり回避せざるをえない場合も多い。
③薬物過敏症は原因(被疑)薬剤の回避が比較的容易だが,食物アレルギーは原因(被疑)食物の完全除去が難しい。加工食品は代表的な原材料の表示が義務づけられているが,外食の場合は原材料が不明であり,小麦アレルギーや(厳密には食物ではないが)アニサキスアレルギーの場合は完全除去が困難である。
診断する医師にとって厄介なのは薬物過敏症であり,自己管理をする患者にとって厄介なのは食物アレルギーと言えるのかもしれない。
【解説】
中村陽一 横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンターセンター長