日本老年医学会が6月、「健康長寿達成を支える老年医学推進5か年計画」を公表した。計画を策定した背景と、同学会が進める高齢者医療認定医制度について、楽木宏実理事長に聞いた。
最長寿国になったわが国において、科学的エビデンスの少ない高齢者医療領域には、急性期ならびに慢性期の医療の課題が山積しています。そうした中で、日本老年医学会として、長寿社会の課題に具体的にどう取り組むのか、目指すべき方向性を明確にしたいと考えました。
計画では、次の5つの柱を設定しました。「Ⅰ老年医学・高齢者医療の普及・啓発」「Ⅱフレイル予防・対策による健康長寿の達成」「Ⅲ認知症への効果的な早期介入と社会的施策の推進」「Ⅳ高齢者の定義に関する研究の推進と国民的議論の喚起」「Ⅴ基礎老化研究の育成・支援」です。
Ⅰは教育面で、「治し支える医療」「生活機能の維持、回復」を目指す老年医学のあり方を目に見える形で社会に示し、人材育成を行う取り組みです。また、高齢者の医療の課題はいろいろあるのですが、最も特徴的な研究と診療の分野として、ⅡのフレイルとⅢの認知症に絞って活動計画を立てました。
Ⅳの高齢者の定義というのは、昨年1月に日本老年学会と合同で発表した、高齢者の定義を75歳以上とする提言のことです。私たちは、この提言を学会と国民をつなぐ契機ととらえています。Ⅴの基礎研究の活性化は、学会本来の活動であり使命でもあります。
高齢者の医療をネガティブにとらえることなく、長寿をポジティブにとらえられる社会にするためには、老年医学を専門にしていない医療者や一般の人たちも含めて認識を共有することが重要です。計画を公表したのは、国民的議論が必要な部分もあり、学会として今後何をしていきたいのか意思表示をしておく必要があると考えたからです。