【知見やツールは充実が見込まれるが,晩期合併症に対する理解と自己管理の徹底が課題】
移植技術の向上と支持療法の進歩に伴い,同種造血幹細胞移植後の長期生存者は確実に増加している。しかし,移植自体が成功し血液疾患が完治しても,慢性移植片対宿主病,感染症や二次がんなど様々な合併症の罹患リスクは移植後長期にわたって持続し,発症すれば,生活の質(QOL)を損ねるのみならず,晩期死亡の原因ともなりうる。
これに対して,近年,移植患者のQOLの向上と晩期合併症のスクリーニングを目的とした長期フォローアップ(LTFU)の重要性が提唱されている。従来,欧米主導の領域であったが,わが国でも,2012年に造血幹細胞移植後患者指導管理料が保険点数化され,17年にはわが国独自のLTFUガイドラインが刊行され,現在では造血幹細胞移植患者手帳の導入が進められている。長期的かつ総合的なサポートを提供するためにLTFUに特化した外来を設置する医療施設も増えている。全国規模のQOL調査や移植後晩期合併症に関する臨床試験が実施される中で,今後LTFUに関する知見やツールはさらに充実することが期待される。
しかしながら,移植後患者におけるQOLの向上と晩期合併症の克服は,システムの構築だけでは到底成しえない。最も大切なことは,患者自身の晩期合併症への理解と自己管理の徹底であり,そのために,我々血液内科医は,他領域の専門医,看護師およびコメディカル等と連携して,患者・家族の心身両面からの包括的な支援と,長期的展望に立った指導・教育を実施していく必要があるであろう。
【解説】
森 有紀 虎の門病院血液内科医長