IgG4関連涙腺・唾液腺炎(IgG4-DS)の腺腫脹は両側性・持続性を特徴とし,涙腺・顎下腺が好発部位である
IgG4-DSの確定診断には,悪性腫瘍や類似疾患を除外するために病変局所からの組織生検が推奨される
顎下腺部分生検は,低侵襲で悪性リンパ腫などの類似疾患との鑑別も可能であり,適切な生検手技と考えられる
口唇腺生検は感度が60%程度と低いため,口唇腺生検単独による診断には注意を要する
超音波検査はIgG4-DSの診断に有用である
IgG4関連疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)は,高IgG4血症と罹患臓器へのIgG4陽性形質細胞の浸潤を特徴とする全身性の疾患であり,わが国から提唱された新しい疾患概念である1)。
IgG4-RDの涙腺・唾液腺病変であるミクリッツ病(Mikulicz’s disease:MD)は,この疾患群の代表的なものであるが,病理組織学的類似性から従来はシェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome:SS)の一亜型として認識されてきた2)。しかし,MDの腺腫脹は持続性,両側性であり,ステロイドが著効するなど,臨床的にSSと異なる所見も多くみられる。
さらに近年,Yamamotoら3)がMDのみに高IgG4血症や唾液腺へのIgG4陽性形質細胞の浸潤を認めることを報告してからは,MDはSSとはまったく異なった機序で生じる疾患であることが明らかになり,現在ではキュトナー腫瘍(Küttner’s tumor:KT)と合わせて,IgG4関連涙腺・唾液腺炎(IgG4-related dacryoadenitis and sialoadenitis:IgG4-DS)と呼ばれている4)。