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【OPINION】世界標準の医療安全教科書から 「何を」学ぶか─知っておきたい『WHO患者安全カリキュラムガイド多職種版』

No.4747 (2015年04月18日発行) P.16

相馬孝博 (千葉大学医学部附属病院 医療安全管理部 教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

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  • 1. ‌はじめに─医療安全管理の歴史と現場のギャップ

    1999年の IOM(Institute of Medicine、米国医学院)報告1)以来、医療安全が医療施設における最優先事項と全世界的に認識されるようになった。日本でも2002年に厚生労働省から医療安全対策検討会議による報告書2)が公表され、すべての病院及び有床診療所に対して、安全管理指針、事故等の院内報告制度、安全管理委員会、安全管理のための職員研修という基本4項目が義務づけられた。

    なかでも職員研修は年間2回程度とされているので、この10数年間、医療機関に勤務していれば、20回以上の講習を受けていることになる。そして日本医療機能評価機構が、医療安全情報を定期的に発信しており、2015年3月までに100回に達している。その他、東京都、日本安全調査機構をはじめとする各種団体が、同様の注意喚起情報を発出しており、医療安全に関する最新情報は、日本国内だけでも毎日のように受け取れる状態にある。また現場の医療者は、インシデント報告を実直に提出し、ハインリッヒの法則、スイスチーズモデル、ヒューマンファクターなどの話を飽きるほど聞かされ、安全に関する各種の決まり事も守るようになった。

    しかし、深刻な医療事故報道が続くのはなぜなのだろうか。たとえばリドカインの希釈間違いに関連する医療事故は、10%リドカインが発売中止となって根絶されることになったが、カリウムなど高濃度電解質溶液の事故はなくなっていない。つまりは「実行しやすかった対策だけが功を奏している」状態といえるのではないだろうか。

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