日本医療安全機構は11月15日に公表した「医療安全情報No.216」で、永久気管孔のある患者に鼻や口から無効な換気を試みた事例を取り上げ、注意を呼びかけた。
こうした事例の報告は2018年1月から24年9月までの間に11件あった。永久気管孔は鼻・口と気管~肺が完全に分離しているため、気管切開をしている患者のように鼻・口からの換気はできない。
今回の医療安全情報ではそのうちの2例について、事故発生の経緯を紹介した。1例目では、患者に永久気管孔が造設されていることがICUのスタッフ間で共有されていなかった。患者の呼吸状態が悪化した際、担当看護師から対応依頼を受けた集中治療科医師は、鼻・口からバッグバルブマスクでの換気を試みた。その後、駆けつけた担当医が患者は永久気管孔を造設されており、鼻・口からは換気できないことを指摘したため、永久気管孔から気管切開チューブを挿入して人工呼吸管理を開始した。
2事例目の患者は咽頭気管分離術後に永久気管孔から人工呼吸管理を受けていた。人工呼吸器のアラームが鳴り、看護師が訪室すると気管切開チューブが抜けていた。看護師は患者に永久気管孔が造設されていることを知らなかったため、鼻・口からバッグバルブマスクで換気を試みたが酸素飽和度は改善しなかった。駆けつけた当直医が換気ができていないことに気づき、永久気管孔から気管切開チューブを挿入して換気を行った。
機構によると事例が発生した医療機関では、(1)患者が永久気管孔造設後であることを電子カルテの決められた場所に記載し、医療者間で情報共有できるようにする、(2)永久気管孔のある患者の緊急時の対応方法についてベッドサイドに掲示する、(3)永久気管孔の構造と換気方法について医師・患者に周知する―といった再発防止のための取り組みが行われているという。