日本医療機能評価機構は1月15日、「医療安全情報No.218」を公表した。経鼻栄養チューブ挿入後のX線画像確認で誤挿入に気づかなかった事例が2016年1月〜24年11月までの間に30件報告されているとし、注意を促した。
機構はうち2事例について事故発生の経緯を詳しく紹介した。それによると、事例1では医師AがICUで治療中の患者の経鼻栄養チューブの入れ替えを行った。チューブ挿入後に医師Aと医師BがポータブルX線撮影装置のディスプレイで画像を確認したが、経鼻栄養チューブの先端は胃内にあると誤って判断した。その後、看護師が内服薬と栄養剤を注入すると患者の呼吸状態が悪化。医師C が気管支鏡を行ったところ、経鼻栄養チューブが気管に挿入されていたことがわかった。
事例2では嚥下障害のある患者に経管栄養を開始することになり、看護師が経鼻栄養チューブを挿入した。その後、医師AがX線画像を確認したが、経鼻栄養チューブの先端は適切な位置にあると誤って判断した。看護師が内服薬と栄養剤をチューブに注入したところ患者の呼吸状態が悪化したため、医師Bが経鼻栄養チューブ挿入後のX線画像を確認すると、肺に誤挿入されていたことがわかった。
同機構は、X線画像による経鼻栄養チューブの走行確認では、(1)気管分岐部を越えても脊椎に沿って走行しているか、(2)ほぼ正中で横隔膜を越えているか、(3)先端は左横隔膜下で胃内に存在しているか―の3点がポイントになると指摘。事例が発生した医療機関では再発防止策として、X線画像による経鼻栄養チューブの走行確認のポイントをまとめ、職員に周知する、経鼻栄養チューブ挿入後のX線画像の確認は、先端の位置だけでなく走行確認のポイントに沿って行う―といった取り組みが行われていることを明らかにした。