日本医療機能評価機構は10月15日に公表した「医療安全情報No.215」で、食事中止時に誤ってインスリンを投与したことにより患者が低血糖をきたした事例を取り上げ、注意を促した。
こうした事例は2016年1月~24年8月までの間に7件報告されている。今回の医療安全情報では代表的な2事例について、事故発生に至るまでの経緯を詳しく紹介した。
1例目は医師の指示出しに問題があったと考えられる事例。患者は外科に入院し、糖尿病内科の指示でノボラピッド注を朝20単位―昼10単位―夕10単位投与されていた。事例発生当日は午後に造影CT検査が予定され、昼食中止の指示が出ていたが、インスリン中止の指示は出ていなかった。このため看護師は昼の分のノボラピッド注10単位を投与。その後、患者に冷汗、振戦が出現し、血糖値を測定すると60mg/dLになっていた。
これに対して2例目は看護師の指示受けに問題があった事例。患者には事例発生当日の朝から食事中止の指示が出ていた。昼の血糖値測定の際、看護師は指示書の「ヒューマログ注ミリオペン9単位投与」の記載を見て患者に同剤を投与した。その後、記録をする際に再度指示書を確認し、「食事中止時ヒューマログ注スキップ」の記載に気づいた。そこで患者の血糖値を測定すると55mg/dLにまで低下していた。
事例が発生した医療機関では再発防止の取り組みとして、①医師は患者の食事の指示に合ったインスリンの指示を出す、②看護師は患者の食事中止時はインスリンの指示が変更されることを考慮し、指示を確認する、③食事中止時はインスリンの投与に関する情報を医療者間で共有し、患者にも説明する―といった対策が講じられている。