経鼻接種のインフルエンザ生ワクチン(フルミスト)は、昨シーズン(2013/14年)のH1N1/09パンデミックウイルス流行時に無効だったことが問題となったが(http://www.cdc.gov/flu/news/nasal-spray-effectiveness.htm)、今シーズン(14/15年)のA香港型インフルエンザ(H3N2)流行にも効果が見られなかった。そのため、米国予防接種諮問委員会(ACIP)は、2~8歳の小児には経鼻接種のフルミストを優先して接種するとした決定を今年は取り下げ、不活化ワクチンに対する優位性を否定した (http://www.cdc.gov/media/re leases/2015/s0226-acip.html)。つまり、米国の2~8歳の小児は従来通り、不活化でもフルミストでも、どちらを接種してもよいこととなった。
1960~90年代の日本の学童集団接種の成果を評価して(Sugaya N. Expert review of vaccines. 2014 20:1-8)、米国、カナダ、英国は、フルミストを小児に集団接種して、社会全体をインフルエンザから守ろうという方針であったが、その妥当性にも疑問が持たれる結果となった。
昨シーズンの流行の主体であったH1N1/09に対しては、不活化ワクチンは効果が高く、各国から60%以上の有効性が報告されていた。本邦でも小児における効果は高く、慶応小児科インフルエンザ研究グループ(代表、菅谷憲夫)の調査では70~80%と高い有効性を認めた。米国疾病対策センター(CDC)によると、2~8歳の小児で不活化ワクチンは60%の効果があったが、フルミストはマイナス31%で無効という衝撃的な結果となった。
残り500文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する