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薬物の吸収,分布,排泄に寄与する薬物トランスポーター(DT)

No.4946 (2019年02月09日発行) P.51

家入一郎 (九州大学薬学研究院薬物動態学教授)

登録日: 2019-02-12

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【薬剤の個別適正化使用にはDTの理解が必須となる】

薬物代謝には,代謝臓器に輸送される必要がある。その輸送の一部は薬物トランスポーター(DT)を介して行われる。近年,この分布過程のみならず,吸収や排泄に関与するDTが数多く同定され,機能が明らかにされている。DTの生体機能を考える場合には,基質薬剤,発現部位,輸送方向性が重要となる。機能が明らかなDTについて概説する。

(1)OATP1B1(organic anion transporting polypeptide 1B1)

肝細胞基底膜側(血液側,類洞膜側)に特異的に発現し,スタチン類やレパグリニドなどの肝細胞への取り込みに作用する。経口投与後のスタチンは効率的に作用の場に取り込まれるので効き目が鋭い。シクロスポリンが強力に輸送を阻害するので,スタチンとは相互作用がある。肝細胞への取り込み阻害は,スタチンの胆汁排泄を介した消失過程を失うので,血中濃度が高くなり,横紋筋融解症などの副作用が生じやすい。また,機能の低下を伴う遺伝子変異もあり,日本人の2%が該当する。

(2)BCRP(breast cancer resistance protein)

小腸上皮細胞管腔側など多くの臓器,器官に発現し,排出型DTであることから,薬剤や異物の小腸からの吸収,中枢組織,精巣や胎児への移行を阻止する。スルファサラジンなどが特異的基質となる。P-糖蛋白質と同様な発現部位,輸送方向性を有している。小腸で機能が亢進すると吸収率は低下し,阻害すると血中濃度は高値を示す。クルクミンなどが阻害薬で,遺伝子変異があり,機能を低下させる変異の頻度は日本人で非常に高い。

【解説】

家入一郎 九州大学薬学研究院薬物動態学教授

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