(秋田県 F)
【下肢静脈超音波で静脈瘤,深部静脈血栓,静脈逆流の有無を検索し,硬化性脂肪織炎と鑑別する】
左下腿の発赤,腫脹の経過が数カ月に及ぶこと,白血球やCRPの上昇がないこと,抗菌薬を投与しても改善していないことより,蜂窩織炎は否定的であると考えます。皮膚病変部は浮腫状でやや硬結が触れるようで,皮下脂肪織炎の存在は疑われます。臨床的には非感染性の脂肪織炎である,硬化性脂肪織炎(うっ滞性脂肪織炎)を一番に考えます。
硬化性脂肪織炎は下肢静脈血のうっ滞が発症要因であり,中年以降の女性に多く,特に肥満している人や立ち仕事の人に多く認められます。検査として,静脈うっ滞の原因となる静脈瘤,深部静脈血栓,静脈逆流の有無を下肢静脈超音波で検索することが一般的です。治療としては日常的な弾性包帯や弾性ストッキングの着用,立ち仕事の中止や体重の減量などの生活指導も必要になりますが,実際には難治であったり,再発する例も多いのです1)。
その他,蜂窩織炎や丹毒の感染症以外で,下肢において類似の皮膚病変を呈する疾患としては,皮下硬結が結節様に限局する場合には結節性紅斑との鑑別を要します。もし臨床的に皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫を強く疑うのであれば,皮膚生検での確認は必須であると考えますが,硬化性脂肪織炎は硬結部を生検すると傷が治りにくくなることもあるため,典型例では臨床診断となることが多いと思われます。
硬化性脂肪織炎は下肢の皮下脂肪織の局所的な病変であるため,それ自体が血小板減少等に影響を及ぼすことはありません。
【文献】
1) 伊崎誠一:紅斑・滲出性紅斑 紫斑 脈管系の疾患(最新皮膚科学大系 第4巻). 玉置邦彦, 編. 中山書店, 2003, p201-4.
【回答者】
小林 束 藤田医科大学皮膚科講師