帯状疱疹はヒトヘルペスウイルス科の水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化で生じる
ヒトヘルペスウイルス(HHV)は現在9種類存在し,これらのすべては初感染後,体のどこかに一生涯潜伏し,抵抗力の低下により再活性化する
VZVは,初感染で水痘になり,その後感覚神経節に潜伏し,免疫記憶細胞(T細胞)の低下により再活性化し帯状疱疹になる
T細胞を再活性化するために,ワクチン接種が重要である
帯状疱疹ウイルスは,ヘルペスウイルス(目)に属し,正式には水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)と呼ばれる。ヒトに初感染で水痘に,再活性化で帯状疱疹を起こす。ヘルペスウイルスは,線状の2本鎖DNAをゲノムとして持つDNAウイルスであり,そのビリオンは正20面体のカプシドがエンベロープに包まれた直径120~200nmの球状粒子である。このエンベロープが感染に重要な役割を果たしている。感染細胞の核内では環状のDNAとなり,ローリングサークル機構によりDNAの複製が起こる。初感染の後,感染個体内に終生潜伏感染するが,それぞれ固有の初感染症状と回帰発症像を示す。増殖細胞はヘルペスウイルスの種類により異なっている。軟体動物から脊椎動物までその種特有のヘルペスウイルスがあり,現在130種類以上存在している1)。
Herpesvirales目は,Herpesviridae科,Aloherpesviridae科ならびにMalacoherpesviridae科に分類され,前2者は脊椎動物を宿主とし,Malacoherpesviridae科は軟体動物を宿主とする。ヒトを自然宿主とするヘルペスウイルスは,生物学的性状に基づいて,αヘルペスウイルス亜科(Alfaherpesvirinae),βヘルペスウイルス亜科(Betaherpesvirinae),γヘルペスウイルス亜科(Gammaherpesvirinae)に分類される。αヘルペスウイルス亜科は,宿主域が広く増殖は速く,神経節に潜伏感染する。単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)1型(HSV-1),2型(HSV-2),VZVがある。βヘルペスウイルス亜科は,宿主域が狭く増殖は遅く,マクロファージ系細胞に潜伏する。ヒトサイトメガロウイルス,ヒトヘルペスウイルス(human herpes virus:HHV)-6タイプA,6タイプB,7がある。γヘルペスウイルス亜科は宿主域が狭く,B細胞に潜伏感染する。造腫瘍能を持つ。Epstein-Barr(EB)ウイルス,HHV-8がある。以上9種類が現在知られている。その他,ヒトに感染するヘルペスウイルスには,サルに単純ヘルペスを起こすBウイルスがあり,ヒトに感染すると脳炎を伴う重症の単純疱疹や帯状疱疹を起こす。したがって,感染症法により届出の必要なウイルス疾患になっている。