有熱性の痙攣重積は,予後の観点からみると後遺症を残さない疾患と残す疾患に大別される。前者の大部分は熱性痙攣複雑型であり,後者の多くが急性脳症・脳炎である。本稿では,一般臨床で遭遇する頻度が比較的高い,インフルエンザによる急性脳症について解説する。
一般には痙攣重積や意識障害にて発症する。急性脳症の定義は「24時間以上持続する急性の意識障害」であるが,急性脳症が疑われるのであればすぐに治療に入るべきであり,この定義は再考の余地があると考える。
当科では,血液検査で肝機能異常(AST,ALT,LDH)1)や凝固系の異常(PT,APTT,FDP,DD)があり,特殊検査としてフェリチンの上昇や尿検査でβ2ミクログロブリンの上昇があれば,急性脳症を強く疑う。
脳波では,初期に高振幅徐波が認められて急性脳症の診断に役立つ。熱性痙攣複雑型でも同様の所見を示すことがあるが数時間で消失することが多い。このように,経時的な変化をみるためにはamplitude integrated EEG(aEEG)が有効である。また,当科では無侵襲脳局所酸素飽和度(regional cerebral oxygen saturation:rSO2)を併用しており,頭部rSO2>肝臓rSO2(10以上の差)があることが急性脳症では多く認められ,血液所見の異常,高振幅徐波と合わせてかなり高率に急性脳症と診断できると考えている。
頭部CTでは,脳浮腫が初期に認められることがある。頭部MRIでは数日経過してから異常を認めるので,入室時に治療介入すべきかを決めるときには有効ではない。
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