日本高血圧学会は19日に記者会見を開き、「高血圧治療ガイドライン(JSH)2019」(作成委員長:梅村敏 横浜労災病院長)を発表した。75歳未満の成人の降圧目標を130/80mmHg未満に引き下げた。
ガイドラインの改定は14年以来5年ぶり5回目。同学会はJSH2019を25日に発行後、今年10月にJSH2019のダイジェスト版、来年3月には実地医家を対象にした高血圧診療のガイドブックを発行する予定。
主な変更点は表1の通り。このうち、高血圧基準は従来通りの140/90mmHg以上とする一方、降圧目標(表2)は、75歳未満は130/80mmHg未満、75歳以上は140/90mmHg未満と厳格化した。
19日の会見で、JSH2019作成委員会の平和伸仁事務局長は、降圧目標を変更した理由について、「厳格治療と通常治療を比較すると、厳格な降圧により心血管イベントを抑制することができる」と述べ、エビデンスに基づいた変更であることを説明した。また、「生活習慣の修正が治療の基本」と強調。例えば、リスク層別化により低・中等リスクに分類された患者が降圧薬治療で140/90mmHg未満になった場合には、生活習慣の修正を強化して130/80mmHg未満を目指すなどとした。
一方で平和氏は、降圧目標の変更により、新たに450万人が降圧薬治療の対象になるとの試算を紹介。「収縮期血圧を10mmHgあるいは拡張期血圧を5mmHg減らすことで、脳心血管イベントを20%減らすことができる」として、その効果を強調した。
米国と欧州のガイドラインの影響については、「日本は脳卒中や心筋梗塞、塩分摂取量が多いという特徴があるので、日本独自の解析とアウトカムにより、診断基準と降圧目標を設定した」との考えを示した。
このほか会見で伊藤裕理事長は、日本の高血圧有病者4300万人のうち、治療により血圧が140/90mmHg未満にコントロールできている人が1200万人(27%)にすぎない現状に危機感を表明。「自分の血圧を知り、管理するという、血圧に対するリテラシーを高めないといけない。一般の方々にも参加してもらう中で、高血圧を減らそうと真剣に考えおり、それはJSH2019の精神でもある」と述べ、高血圧患者の減少に意欲を示した。