糖尿病神経障害は糖尿病患者の約1/3に合併する頻度の高い合併症である。感覚神経障害による手足の異常感覚,しびれ,痛みや自律神経障害による起立性低血圧,便秘・下痢,神経因性膀胱など,多彩な症状を呈し患者のQOLを著しく低下させるため,その的確な診断と治療が重要である。
日常診療においては「糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準案」を用いる。「しびれ」や「痛み」といった自覚症状の有無,アキレス腱反射の減弱・消失および振動覚閾値の低下をもとに診断する。自覚症状の特徴としては慢性,両側対称性,遠位優位であること,また通常,足趾先や足裏から生じ,上肢のみに症状が出ることは稀である。初期には「チクチク」「ピリピリ」だけでなく「足裏に薄皮を張った感じ」などという表現で患者が訴える場合もある。ただし,同時に糖尿病神経障害以外の末梢神経障害を除外することが重要であり,特に片側性の症状や間欠性跛行などは脊柱管狭窄症などの整形外科的疾患や末梢動脈疾患などの合併を疑う必要がある。
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