(宮崎県 A)
【筋炎ではない壊死性筋膜炎でCPKが上昇することは稀なため】
LRINECスコアは壊死性筋膜炎が疑わしい場合の補助的診断ツールとして,Wongら1)が提唱しました。壊死性筋膜炎と重症の蜂窩織炎の検査値を後方視野的に比較検討し,CRP,WBC,Hb,血清Na,血清Cr,血糖の6項目をスコア化し,6点以上は壊死性筋膜炎とするためのカットオフ値としています。感度90%,特異度97%とされています。原著の論文ではCPKの検討はされていません。
壊死性筋膜炎の病変の主座は皮下の結合織の粗な部分(浅在性筋膜)で,水平方向に拡大していきます(図1)2)。筋層の上の深部筋膜ではありません。病理組織では表皮,表皮付属器の壊死,表皮下水疱,真皮から皮下組織にかけての壊死,好中球の浸潤,大小血管の閉塞,血栓の像を認めます。
そもそも筋炎ではない壊死性筋膜炎でCPKが上昇することは多くはないので,CPKの情報はそのスコアには含まれていないと思われます。しかし広範に筋肉に炎症が波及した場合はCPKが高値になることはあります。Vibrio vulnificusによる壊死性筋膜炎の早期診断に重要であるという報告3)もあります。
このスコアはあくまで補助的診断であって,アルゴリズムにもありますように臨床診断,画像診断が優先で,疑わしい場合は試験切開して肉眼で壊死を確認する必要があります。
【文献】
1) Wong CH, et al:Crit Care Med. 2004;32(7): 1535-41.
2) 荒田次郎:壊死性筋膜炎 necrotizing fasciitis とその類症. 図解皮膚細菌感染症. 田辺製薬, 1997, p54-65.
3) Simonart T, et al:J Eur Acad Dermatol Venereol. 2004;18(6):687-90.
【回答者】
山﨑 修 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野准教授