2015年4月11日付の本誌第4746号OPINION欄に、大島明氏(以下、大島氏)の「電子タバコに日本はどう対応するべきか」という電子タバコ容認論(以下、容認論)が掲載された。大島氏の容認論は、タバコ産業が「別の形の」ニコチン依存症ビジネスにまで仕事の範囲を拡大しようとしていることに対して、公衆衛生医師の立場から協力を表明するものであり、大変遺憾である。
電子タバコには、ニコチンを含むENDS(Electric Nicotine Delivery Systems)と、ニコチンを含まないENNDS(Electric Non Nicotine Delivery Systems)が存在するが、ここでは欧米で流行し新たな依存症の原因となっているENDSを指すものとする。ニコチンを含まないENNDSは、物珍しさで開始しても依存性がないため、すぐに飽きられ流行の危険性は少ない。筆者はENDSもENNDSも禁止すべきとの立場であり、以下に大島氏の容認論に対する批判を述べる。
1.『電子タバコ(ENDS)は医薬品として規制するのではなく、タバコ製品として規制するべきである』 【反対】
日本では「たばこ事業法」により、タバコ製品はすべて財務省の管轄となっている。ENDSをタバコ製品とした場合は、財務省による現在のタバコ並の規制となり、国民の健康を守ることは極めて困難である。一方、ENDSを禁煙目的の医薬品として位置づけるのであれば、医師や薬剤師の厳重な管理下に置くべきである。また、その前提として、医薬品としての厳格な審査を受け、合格しなければならない。しかしENDS蒸気中には、発がん物質のホルムアルデヒド等のカルボニル類が検出されており、海外ではENDS使用によるリポイド肺炎や急性好酸球性肺炎の報告が出始めている。
禁煙目的の医薬品の選択肢を増やすのであれば、むしろ欧米では承認されているニコチンのスプレーやロゼンジなどの認可を進めるべきである。
ENDSによる禁煙成功率は、ニコチンパッチと同等レベルと報告されており、バレニクリンなど高い成功率を有する医薬品がある現在、ENDSを禁煙目的の医薬品として導入する意義は認められない。
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