骨髄増殖性腫瘍のひとつで,分化した異常クローン由来の巨核球や単球などからの増殖因子・サイトカインの産生によって骨髄の広範な線維化などを生じ,骨髄の線維化,血管新生および骨硬化を生じ,髄外造血による巨脾,巨脾による腹部膨満感,圧迫症状,無効造血による貧血,血小板減少,末梢血での涙滴状赤血球の出現,白赤芽球症などを呈する。このため,原疾患に伴う全身倦怠感や活動性の低下,呼吸困難,体重減少,夜間盗汗,微熱などの全身症状,脾腫に伴う腹部膨満感や圧迫症状,血球減少に伴う症状がみられる。
WHO分類改訂版2017に準じて診断するが,診断には骨髄生検が必要である。病期として,線維化を認めない前線維化期と線維化期にわけられる。JAK2,CALR,MPLのいずれかの遺伝子変異が認められる。
根治的治療は同種造血幹細胞移植のみであるが,発症年齢からその適応は限られる。同種造血幹細胞移植以外の治療は,貧血および脾腫に伴う腹部症状の改善が目的である。臨床経過や予後は均一ではなく,症例間によるバラツキが大きいので,予後予測モデルを用いて個々の症例のリスクを評価し,患者と十分に相談しながら治療方針を決めていくことになる1)2)。
低リスクおよび中間-Ⅰリスクでは,症状に乏しい症例や,以下の臨床所見のない症例(Hb<10g/dL,脾腫>10cm,白血球数>2万5000/μL,血小板数>100万/μL)は,支持療法のみでも長期の生存が期待できるため,経過観察を行う。ただし,貧血や脾腫による症状を呈する場合は,それに対する治療を行う。
中間-Ⅱリスクおよび高リスクでは,可能であれば,同種造血幹細胞移植を行う。中間-Ⅱリスク群,高リスク群に該当し,適切なドナーが存在する場合には,診断後早期の同種造血幹細胞移植を念頭に治療にあたる。移植適応がない場合は,症状に応じての治療の選択,あるいは,Janus activating kinase 2(JAK2)阻害薬,新規治療の臨床試験への参加を検討する。
貧血に対しては赤血球輸血や蛋白同化ステロイド療法を行う。
脾腫に伴う腹痛などの症状に対しては,ヒドロキシウレア,JAK2阻害薬であるルキソリチニブ,摘脾,脾臓への放射線照射を検討する。また,脾腫に加えて全身症状を有する場合も,ルキソリチニブが有効である。ルキソリチニブは,脾腫の改善や全身症状の改善に加えて,生命予後の改善も期待できるとの報告がある。
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