2017年の人口動態統計で、10代前半の死因の1位が、初めて「自殺」になった。自殺者総数は年々減少しているが、10代の自殺は減っていない。10代の自殺を減らすにはどうしたらよいのか。若年者の自傷・自殺対策に取り組んできた松本俊彦氏に聞いた。
原因の一つは、なぜ命を絶ったのか理由が分かりにくい子が多いために、対策が立てにくいからです。思春期に入ると、子どもたちは急速に親に秘密を作ります。ですから、自殺が起きてから周りが騒然とするけれども、本当のところ何があったか分からない場合が多いのです。いじめがあったとしても、SNSの中だったり、親や学校の先生には見えにくいところで起こっています。
私は、約10年間かけて、「心理学的剖検」として、一番近しい遺族に、自殺で亡くなった方に対する聞き取り調査を実施しました。10代の自殺者のご遺族からも話を聞きましたが、きっかけとなる嫌な出来事があったとしても、他の世代と比べて、自殺に至るまでの期間が短いと感じました。
子どもたちは大人に比べると、比較的ささいなストレスで死を考えます。なぜなら、子どもたちは人生のさまざまな選択肢を知らないからです。小学4年生くらいまでは家庭、高校1年生くらいまでは学校が世界の全てで、そこで行き詰まると、世界が終わった感じがしてしまうのです。
また、中学生くらいまでは死生観が未熟です。死んでもまた生まれ変わる、自殺で人生をリセットできると考えている子が多いのも、簡単に死を選んでしまう理由かもしれません。