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PTSD治療について

No.4984 (2019年11月02日発行) P.49

今津伸一 (大阪医科大学神経精神医学)

金沢徹文 (大阪医科大学神経精神医学講師)

登録日: 2019-10-31

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【“decoded neurofeedback”など新しい治療法の開発が進んでいる】

PTSDはpost traumatic stress disorder(心的外傷後ストレス障害)の略で,天災,事故,犯罪,虐待などによって強い精神的衝撃を受けたことが原因で心身に支障をきたし,様々なストレス障害を引き起こす精神疾患である。フラッシュバックや過覚醒に加えて,二次的な抑うつなどで社会生活に困難をきたすことが多いことがわかっている。

以前は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を主とした薬物療法が中心であったが,効果は限定的で現在は様々な試みがなされている1)。欧米で認知されているEMDRは眼球運動による脱感作と再処理法で,訓練された治療者が行うことで一定の効果があることがわかっている。また,持続性曝露療法はPTSD患者のトラウマ記憶に適切な再処理を行う技法で,米国の心理学者Foaが開発した。

さらに最近では“decoded neurofeedback”という技法の開発も進んでいる。実施している施設は限られており,いまだ研究段階の手法であるが,MRI機器内で恐怖刺激に対する脳活動をリアルタイムで計測し,望ましい脳活動パターンに自ら近づけていくことで,恐怖記憶に対する扁桃体を中心とした反応を抑制しようとする技術である2)

新しい技術により,これまで治療効果に乏しかったPTSD治療に光が当たるようになってきている。

【文献】

1) 髙橋麻友子, 他:最新精神医. 2016;21(4):285-92.

2) Chiba T, et al:Front Hum Neurosci. 2019;13: 233.

【解説】

今津伸一,金沢徹文  大阪医科大学神経精神医学 *講師

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