不動産投資を行うにあたり、そのコストとして必ず考慮しなければならないのが「税金」です。その税金は、不動産を①取得したとき、②賃貸したとき、③譲渡したとき─に区分して整理しておくと分かりやすいでしょう。また、不動産を①医師個人として購入するか、②法人として購入するか─によって税金の種類が異なります。さらに、医師個人による不動産投資は相続税と大きな関わりがあります。今回は医師個人として不動産投資を行った場合の税金について解説します。
医師個人が不動産を取得した場合には、所有権移転登記を行うときに登録免許税がかかります。登録免許税は不動産(土地及び建物)の価額(固定資産税評価額)に対して土地2%(2021年3月31日までの間の登記については1.5%)、建物2%の税率で課税されます。
また、不動産を取得してから約6カ月後(ときには取得から1年以上経過した後)に不動産取得税がかかります。不動産取得税は不動産の価格(固定資産税評価額)に対して土地3%、建物3%(ただし非住宅の場合は4%)の税率で課税されます。なお、2021年3月31日までに土地のうち宅地等を取得した場合は、取得した土地の価格×1/2が課税標準額となります。
医師個人が不動産を取得し、これを賃貸した場合には、その賃貸収入から必要経費を控除した不動産所得に対して所得税がかかります。不動産所得は他の所得(例えば、事業所得や給与所得など)と合算する「総合課税」として所得税が課税されます。所得税の総合課税の税率は5%~45%の7段階に区分されています。所得税の税率は超過累進税率(所得が低い部分には低い税率、所得が高くなるにつれて高い部分に対しては高い税率が適用される累進税率のこと)です。つまり、他の所得(事業所得や給与所得など)で、すでに高い所得を有している医師個人であれば、その所得に不動産所得が加算されるので、不動産所得に対して課税される所得税率は高くなります。
なお所得税には復興特別所得税が加算されます(所得税額×2.1%)。また、住民税も所得税とほぼ同じ所得金額に対してかかるので、所得税がかかる場合には住民税もかかることになります。これらの所得税、復興特別所得税、住民税の合算税率で考えますと、他の所得だけで既に課税所得が1,800万円を超えているケースでは、その所得に不動産所得が加算されるので、不動産所得に対しては50.840%の税率で課税、他の課税所得が4,000万円を超えているケースでは55.945%の税率で所得税等が課税されることになります(図)。
不動産を購入した当初は、登録免許税、不動産取得税、リフォームのための修繕費などの必要経費がかかり、不動産所得が赤字になることも考えられます。不動産所得の赤字は、他の所得(事業所得や給与所得など)と損益通算することができます。
医師個人が所有する不動産を譲渡した場合には、その譲渡収入から取得費(購入金額から減価償却費を引いた残額)及び譲渡費用(譲渡時の仲介手数料など)を控除した譲渡所得に対して所得税がかかります。
不動産の譲渡所得は他の所得(例えば、事業所得や給与所得など)とは合算せずに「分離課税」として所得税を計算します。税率は、下記の通り譲渡した不動産の所有期間によって異なります。
私は14年以上、収益用不動産を専門に資産運用コンサルティングを行ってきました。今回は、当社のオーナー様にもご支持いただいている、収益用不動産を用いた減価償却による節税について解説します。
収益物件の活用とは、具体的に物件取得、管理運営、出口戦略(売却)までの一連の活動を指します。不動産投資をされる多くの方が物件の取得に大きな関心を持つ一方で、出口戦略、つまり売却をもって利益もしくは損失が確定するという視点を見失いがちです。このトータルで不動産投資を考える点が非常に大切です。
節税には①納税時期を先送りする方法、②税金の絶対額を減らす方法─の2種類があります。①は法人向けの生命保険などで支払った保険料の一部を損金算入でき、その時点では節税効果を取りながら、解約時の戻ってきた解約返戻金に課税され、税金を納めるものです。当社でご紹介しているスキームは②の税金の額を減らす方法です。当社が販売する中古一棟ものアパート・マンションでは、キャッシュフローをプラスに保ちながら、不動産特有の減価償却をうまく設定することで帳簿上の赤字を計上することが可能となり、利益をコントロールし節税を図ることが可能になります。
個人で取得すれば所得税(など)の節税になります。メリットは、他の金融商品と異なり、キャッシュアウトせずに帳簿上の赤字を計上できる点にあります。
この方法では収益物件の売却時に同じ税金がかかってしまう、つまり繰り延べにすぎないのではないかという疑問が出てきます。しかし、不動産の譲渡所得、つまり売却時の所得は他の所得とは合算しない「分離課税」となります。そして、その税率は長期譲渡所得(所有期間5年超)であれば20.315%となります。つまり、収益物件を保有中には他の所得と損益通算され、所得に応じた税率がかかっていたのに対して、売却時には一律で約20%となります。この税率の差異が収益用不動産を活用した節税の肝となるのです。
紙幅の関係上、節税に適した物件の選び方などのお話ができませんでしたが、収益物件の詳しい活用法は、下記拙著や無料の個別相談、セミナーなどでご説明しておりますので、ぜひお問い合わせください。
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