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突発性発疹(小児)[私の治療]

No.4987 (2019年11月23日発行) P.56

細矢光亮 (福島県立医科大学小児科教授)

登録日: 2019-11-24

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  • ヒトヘルペスウイルス6B型(HHV-6B)による顕性感染像が突発性発疹である。生後4カ月~1歳に好発するが,新生児期発症例や年長児での初感染例もある。典型例は,突然の発熱で発症し,弛張あるいは稽留する高熱が3~4日間続き,分利性に解熱する時期に顔面から体幹にかけて麻疹様あるいは風疹様の小紅斑が出現,その後融合傾向を示しながら四肢に拡大し,色素沈着を残さず消退する。経過中,軽度から中等度の下痢を伴うことが多いが,カタル症状に乏しく,高熱の割に全身状態は良く,機嫌も悪くない。しかし,HHV-6B初感染者の約30%は不顕性感染あるいは発熱や発疹のみの不全感染である。HHV-7は突発性発疹あるいはそれに類似した症状を引き起こすが,HHV-6Bよりも好発年齢が高く,2度目の突発性発疹と診断される場合がある。HHV-6Aの初感染臨床像は不明である。突発性発疹は一般的には予後良好で,5~7日の経過で治癒する。しかし,熱性痙攣,脳炎・脳症などの中枢神経系合併症や,肝炎,血小板減少性紫斑病,血球貪食症候群,心筋炎などの合併症をきたすこともある。特に,痙攣重積型脳症の原因として最も頻度が高い。

    ▶診断のポイント

    健康成人の唾液中にはHHV-6Bが排泄されており,感染経路として有力視されている。母体からの移行抗体が存在するため,乳児期前半は防御されているが,移行抗体が減少する乳児期後半に,ウイルスを含む唾液と接触することで感染・発症する。このため,発症頻度は年間を通してほぼ一定であり,明らかな季節性はない。乳児期後半で,生後初めての発熱の場合はHHV-6B感染症のことが多い。特徴的な臨床症状を呈すれば,臨床診断が可能である。しかし,病初期には他の病原体でも同様の症状を呈するので,診断の確定には血清診断やウイルス遺伝子検出などのウイルス学的診断法を用いる。典型的な症状を呈さなくてもHHV-6B感染症が疑われる場合にも,同様にウイルス学的診断法を用いて診断する。ただし,PCR(polymerase chain reaction)法などのウイルス遺伝子検出法は,健康保険未収載である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    一般的には予後良好で自然治癒する疾患であるので,治療は対症療法になる。主症状である発熱に対しては,全身状態が良好で機嫌も良く,十分な水分摂取が可能であれば,氷枕などによるクーリングで経過観察する。高熱が稽留し,飲水もできないような場合は,アセトアミノフェンの頓用を用いる。頓用後数時間は1~2℃解熱し,全身状態にも幾分改善がみられるので,その間に水分などを摂取させ脱水をきたさないようにする。下痢がみられる場合は整腸薬を投与する。発熱,水分摂取不良,下痢などで脱水症状がみられる場合は補液する。経口摂取が可能な場合は経口補水を,不可能であれば点滴静注を行う。

    突発性発疹は熱性痙攣,痙攣重積,急性脳症などの中枢神経合併を伴うことが多い。このため,突発性発疹が疑われる場合は,発熱期間中は目を離さず,意識障害や痙攣の出現に注意を払うように指導し,万一認めた場合は,医療機関を受診するように伝えておく。来院時に痙攣が持続している場合は,ジアゼパムやミダゾラムを用いて速やかな止痙を試みる。反応が思わしくない場合や意識レベルの低下が続いている場合は,痙攣重積や急性脳症を考慮して高次医療機関に搬送する。

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