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腟トリコモナス症[私の治療]

No.4991 (2019年12月21日発行) P.44

冨尾賢介 (帝京大学ちば総合医療センター産婦人科)

梁 善光 (帝京大学ちば総合医療センター産婦人科教授)

登録日: 2019-12-21

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  • 腟内に腟トリコモナス原虫(Tricomonas vaginalis)が生着することで生じ,尿路やバルトリン腺,スキーン腺にも感染する1)。腟分泌物の「鏡検法」が診断の基本である。5-ニトロイミダゾール系の薬剤(内服錠もしくは腟錠)で治療するが,尿路感染を伴うことも多く,「内服錠による全身投与」がファーストチョイスとなる。

    ▶診断のポイント

    泡沫状黄色帯下の増量,腟壁の発赤,子宮頸部粘膜上皮の点状出血などが特徴的所見として知られているが,約10~20%は無症候性感染である。検出には,腟分泌物の鏡検法,培養法が有用とされているが,子宮頸部細胞診で検出されることもしばしばある1)。まずは,簡便な鏡検法(診断率は約60~70%)から行い,鏡検法で確認できない場合には,培養法(診断率は約90%)を行う。まだ日本では認められていないが,欧米では核酸増幅検査が既に認可されており,今後導入される可能性がある。性行為感染症として認知されているが,性行為以外の感染経路もあるため(浴槽など),小児や高齢者,性交未経験者でも発症することがある2)。患者説明の際,配慮すべきポイントとなる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    他の細菌性腟症や性感染症をしばしば合併することから,最終的な治療目標として,腟内細菌叢の正常化を図ることを念頭に置くことが重要である。

    腟トリコモナス症の治療には,5-ニトロイミダゾール系の薬剤が使用される。国内ではメトロニダゾールとチニダゾールの2種類が使用可能であるが,前者の使用が一般的である。それぞれ内服錠と腟錠があり保険適用とされるが,腟内のみならず尿路感染も合併していることがあるため,内服錠による全身投与を基本とする。何らかの理由で内服困難な場合は,腟錠での治療を行う。

    パートナーとのピンポン感染を防ぐことも重要であり,同時期に治療を行うことを原則とする。治療後は月経血中で増殖することがあるため,次回月経後に症状やトリコモナス原虫の消失を確認する。妊娠中の場合,全妊娠期間を通じて,メトロニダゾールの内服錠(フラジール®内服錠)が使用可能である3)。ただし,国内添付文書上は有益性投与,妊娠3カ月以内の内服は避けることとされており,「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2017」では,「推奨グレードC」として扱われている1)。本稿でも同ガイドラインに準じた。

    ニトロイミダゾール系の薬剤は,構造中にニトロ基を持つことから,動物実験レベルで発がん性との関連が示唆されてきたが,現在,ヒトでの発がん性との関連については否定的な報告も多い4)。しかし,実臨床においては,1クールの投与期間は10日間程度まで,再感染等で追加治療が必要な場合は,1週間以上の休薬期間を設けるなど,漫然と長期投与を行わないよう注意する。

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