小児の夜尿症は患者の自尊心を傷つけることが報告されており,最近は積極治療の対象疾患であるという認識が広まっています。ガイドラインによると治療の第一選択には「デスモプレシン製剤」と「アラーム療法」が挙げられていますが,後者のアラーム療法について詳しく教えて下さい。特にアラーム療法が「なぜ効くのか?」といった作用機序や,夜間にアラーム音で起きることによる弊害(成長障害,抗利尿ホルモン分泌リズムへの悪影響)の有無について知りたいです。
そこで,昭和大学藤が丘病院・池田裕一先生に夜尿症に対するアラーム療法の最近の考え方についてご教示をお願いします。
【質問者】
西﨑直人 順天堂大学医学部附属浦安病院小児科准教授
【デスモプレシン製剤とともに積極治療の第一選択として位置づけられる】
アラーム療法とは夜間睡眠中の排尿による水分を検知して警報が鳴る装置を用いた治療法であり,夜尿症に対する行動療法のひとつです。
各種治療法の中でもアラーム療法は歴史が古く,1938年にMowrerら1)が有効性を発表して以来,その効果を示す報告が集積され今に至っています。2016年に夜尿症学会から発刊された「夜尿症ガイドライン2016」2)においても,アラーム療法はデスモプレシン製剤とともに積極治療の第一選択として位置づけられ,特に患児や保護者の治療モチベーションが高い場合は使用が推奨されています。
アラーム療法には保険適用がないため,ごく最近まで治療の大半は薬物療法が担ってきましたが,ガイドライン発刊以降,徐々にアラーム療法を選択する医師も増えてきています。現在,私たちが利用できるアラーム装置には無線式と有線式の2種類がありますが,感度の良さとコードの煩わしさを嫌う子どもが多いため無線式アラーム装置が主に使われています。
夜尿症に対するアラーム療法の長所は,治療効果が高く,再発率が非常に低いこと,短所としては保護者が自費で購入もしくはレンタルが必要なこと,夜間にアラームが鳴ることで同室の兄弟や家族の睡眠が妨げられることがあります。
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