頸動脈内膜剥離術(CEA)後には抗血小板療法が必要となるが、各種ガイドラインはアスピリンを推奨するにとどまり、クロピドグレルを追加した抗血小板薬2剤併用(DAPT)の位置付けは明確ではない。しかしCEAの有用性を検討したランダム化試験やレジストリ研究では、3割前後の患者でDAPTが施行されていた。このような背景を受け、2月19日からロサンゼルス(米国)で開催された国際脳卒中学会(ISC)では、大規模レジストリデータを用いた、CEA後のアスピリン単剤(SAPT)とDAPTの比較が報告された。症候性の頸動脈肥厚例に限れば、DAPTのほうが有用である可能性が示された。Tathan Belkin氏(ペンシルバニア大学、米国)が、一般口演で報告した。
解析対象となったのは、2003年から18年にかけ、米国・カナダの血管手技レジストリに登録されたCEA施行前例(8万7074例)から、抗凝固療法使用例、抗血小板薬非使用例、クロピドグレル単剤例を除外した7万2122例である。SAPTで退院していたのは64.6%、DAPTは35.4%だった。平均年齢は70歳、37.2%が症候性例だった。
これらSAPT群とDAPT群では背景因子が異なるため、傾向スコアを用いて背景因子をマッチさせた8699例で比較を行った。
その結果、退院後2年間の「脳卒中・一過性脳虚血発作(TIA)・死亡」の発生率は、両群間に有意差を認めなかった。しかし症候性患者に限れば、DAPT群で約2.5%、有意(P=0.03)に低値となっていた。ただし、「脳卒中・TIA」のみでは、症候性患者でも、DAPT群とSAPT群の間で発生率に差はない。同様に5年生存率も、症候性患者では、DAPT群でSAPT群に比べ約2.5%、有意(P=0.01)に良好だった。傾向スコアマッチではなく、全例で多変量解析をしても、5年間生存のオッズ比は、DAPT群で有意に高値となっていた。
Belkin氏は、ランダム化試験の必要性を訴えた。