【単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズ】
わが国では,年間約120万件の白内障手術が行われている。現在は,小切開創(3.0mm以下)から行う超音波水晶体乳化吸引術が主流である。
使用される眼内レンズには「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」があり,多焦点眼内レンズは全白内障手術の1.5~2.0%で使用されている。多焦点眼内レンズは,遠方と近方(もしくは中間距離)の両方に焦点が合うため,眼鏡装用頻度が減少し,QOLの向上が期待できる。メタアナリシスの結果においても,多焦点眼内レンズ挿入後の遠方裸眼視力は,両眼で平均0.91で,80.1%の症例で術後眼鏡装用が不要であったと報告されている1)。
一方で,ハローグレアの発生やコントラスト感度の低下などの単焦点眼内レンズにはない有害な視覚現象の発生が多く,眼内レンズ挿入後に摘出を余儀なくされた症例も報告されている1)~3)。さらに,白内障以外の疾患(緑内障,網膜疾患,角膜混濁など)がある場合には使用できないなど,現段階では,その使用に制約も多い。今後の発展が待たれるところである。
【文献】
1) Rosen E, et al:J Cataract Refract Surg. 2016; 42(2):310-28.
2) de Silva SR, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2016;12:CD003169.
3) Kamiya K, et al:Am J Ophthalmol. 2014;158 (2):215-20.
【解説】
今井尚徳 神戸大学眼科講師