①Don't perform food immunoglobulin E(lgE)testing without a history consistent with potential IgE-mediated food allergy.
(American Academy of Allergy, Asthma & Immunology: March 3, 2014)
②Don’t perform unproven diagnostic tests, such as immunoglobulin G(lgG)testing or an indiscriminate battery of lgE tests, in the evaluation of allergy.
(American Academy of Allergy, Asthma & Immunology:April 4, 2012)
①IgE依存性食物アレルギーを示唆する病歴がないにもかかわらずIgE抗体検査を施行してはならない。
(米国アレルギー・喘息・免疫学会:2014年3月3日)
②アレルギー評価において,IgG抗体検査や非特異的総IgE抗体検査といった確立されていない検査を行わない。
(米国アレルギー・喘息・免疫学会:2012年4月4日)
本稿では,食物アレルギーの診断検査の中でも特に頻用されている採血検査の“賢い選択”について見ていく。今回ご紹介するChoosing Wiselyの推奨リストは米国アレルギー・喘息・免疫学会のリストからの2項を引用している。リストの根拠文献として挙げられているものは総説およびガイドラインが中心であり,従来から同学会が提唱し続けてきたことをChoosing Wiselyのリストという形で,改めて医療者や患者にもわかりやすい形で投げかけてくれている。
わが国では一般内科医でも診察する機会の多い食物アレルギーであるが,まずはその診断方法について確認しておこう。食物アレルギーの診断は,①特定の食物により症状が誘発されること,②それが特異的IgE抗体などの免疫学的機序を介する可能性があること,の2点を証明することで確定する。つまり,特異的IgE抗体を検出する採血検査や皮膚プリックテストだけで診断をつけるのではなく,それに加えて明らかな因果関係が想定される誘発症状の詳細な病歴を確認し,因果関係が疑わしいレベルであれば食物除去・負荷試験を行って確認することがスタンダードとなっている1)。
わが国の臨床現場で広く用いられている採血検査は,抗原特異的IgE抗体を測定する検査であり,製品としてはイムノキャップ®やアラスタット3gAllergyなどが多く使われている。採血のみで実施できるため他の検査と比べると簡便であり,保険点数上では1回の採血で13項目(1430点)を上限としてアレルゲン物質を測定できる。経済的に考えれば13項目すべてを使ったほうがよい衝動に駆られてしまうだろう。だが,それは本当に“賢い選択”となっているだろうか。
まず,特異的IgE抗体の存在は,あくまで当該食物アレルゲンへの「感作」を示しているだけであって,その存在が必ずしも「発症」に関わる真のアレルゲンであるとは限らない。そのため,その検査特性は食品によって差異はあるものの,一般的に感度は優れる一方で特異度は低いとされている。米国において,2007~08年の1年間に確定診断である食物経口負荷試験を行うために入院した1~19歳の小児125人を対象に後ろ向きにカルテレビューを行ったところ,入院時に特異的IgE抗体検査あるいは皮膚プリックテストの結果を理由に食事制限をかけられていた小児の中のうち,実際に食物経口負荷試験を行ってみると陰性だった割合は,小麦を除くすべての食品で80%以上を占めていた2)。つまり,特異的IgE抗体検査の結果につられて診断と食事制限を行うと,その多くが偽陽性ということになり,過剰に診断することによる不安感と食事制限のために患者の不利益につながってしまう。
本邦で実施された,「アレルギー科」を標榜している医療機関の医師約7000人を対象としたアンケート調査によると,血液検査の結果だけで食事制限している医師が全体の5~15%程度を占めているとの結果が報告されている3)。この結果からも,わが国でも過剰に診断し,食事制限がかけられている患者が少なくないことは容易に想像できるだろう。
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