【C. neoformans感染症との鑑別が必要である】
クリプトコックス症は,わが国ではCryptococcus neoformansおよびC. gattiiによる感染症で90%を占めるとされ,残り10%はC. albidusまたはC. laurentiiが占める。多くの菌種が存在するが,病原性を持つものはわずかである1)。
C. gattiiはC. neoformansに比較し,免疫応答が正常でも発症する。この10年間で増加傾向にあるC. gattiiの感染対策が必要である2)。生息地は熱帯・亜熱帯地域であり,1999年にカナダのバンクーバー島東海岸地方で集団発生が起こり,その後,米国ワシントン州やオレゴン州などで発生した。99年以降,健常者を含む100人以上がC. gattiiに感染し,死亡例も報告された。2007年に日本人での発症例が報告された3)。発生地域への渡航歴がないが,バンクーバー島でのVGⅡaと同一の株と確認され,世界的な拡大傾向が危惧された。
潜伏期は2~11カ月であり,1年前にまで遡った渡航歴の聴取が必要である。発熱などの感染症状に加え,呼吸器症状,神経症状もみられる。健常者により多く起こり重症化しやすい。C. neoformansとC. gattiiとの鑑別は困難なことが多いが,C. gattiiも鑑別診断に入れた診療が必要である4)。
【文献】
1) Chen SC, et al:Clin Microbiol Rev. 2014;27(4): 980-1024.
2) 国立感染症研究所:IASR. 2015;36(10):187-8.
3) Okamoto K, et al:Emerg Infect Dis. 2010;16(7): 1155-7.
4) 日本医真菌学会:日本医真菌学会クリプトコックス症の診断・治療ガイドライン. 日本医真菌学会, 2019, p90-5.
【解説】
重見博子*1,岩崎博道*2 福井大学医学部附属病院 *1呼吸器内科 *2感染制御部・感染症膠原病内科教授