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乳糖不耐症[私の治療]

No.5011 (2020年05月09日発行) P.65

島袋林秀 (聖路加国際大学臨床准教授・聖路加国際病院小児科医幹)

登録日: 2020-05-12

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  • 乳糖不耐症は,二糖類である乳糖をグルコースとガラクトースに分解する乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が欠損あるいは低下しているために,乳糖を消化吸収できず,浸透圧性下痢,腹痛,嘔吐,腹部膨満などを生じる疾患である。高浸透圧性溶質である乳糖がラクターゼで分解されないことにより大腸内での浸透圧格差が生じ,腸管内に水分が漏出するとともに,腸内細菌叢による乳酸やガス産生により消化器症状が生じる。
    小児期に問題となるのは,先天性乳糖不耐症と二次性乳糖不耐症の2つである。先天性乳糖不耐症はラクターゼの構造遺伝子であるLCT遺伝子の異常によってラクターゼ活性を障害される,非常に稀な疾患である1)。一方,二次性乳糖不耐症は乳幼児のウイルス性胃腸炎などの感染後に生じ,一過性である。小児診療で遭遇する乳糖不耐症のほとんどを占める。
    学童期以降や成人期になると,成長とともにラクターゼ活性が低下するlactase non-persistenceが乳糖摂取時に問題となることがあるが,日本人の多くは遺伝的変異によりラクターゼ活性が低下しない体質のため,問題になりにくい2)

    ▶診断のポイント

    【症状と便の特徴】

    主症状は,著しい水様下痢,腹痛,腹鳴,腹部膨満,嘔吐である。下痢便の特徴は,pH5.5以下の酸性便(いわゆる酸っぱい便臭),便中osmotic gap 100mOsm/L以上,便中Na<70mEq/Lのことが多い。絶食にして乳糖を制限すると下痢は改善する。便中還元糖検出試験であったクリニテストは2012年に製造中止となっている。

    【先天性乳糖不耐症】

    哺乳直後から難治性下痢と,長期的には体重増加不良,発育障害を認める。症状は不可逆的であり,常染色体劣性遺伝の家族歴を認めることがある。経口乳糖負荷試験や小腸粘膜生検などで診断される。グルコース・ガラクトース吸収不全の否定のため,経口ブドウ糖負荷試験でブドウ糖吸収が正常であることを確認することが望ましい。小児慢性特定疾病にも指定されている1)

    【二次性乳糖不耐症】

    小児診療で遭遇することが最も多く,乳幼児のウイルス性腸炎の罹患後半あるいは罹患後に引き続いて生じることが多い。適切な対応をすれば数週間で改善し,その後は以前のように乳糖摂取が可能となる。特に検査を要さず,臨床経過や便の性状のみで診断されることが多い。

    【鑑別疾患】
    〈新生児・乳児消化管アレルギー/ガラクトース血症〉

    牛乳による消化管アレルギーでは,乳糖を除去した調整粉乳に変更した後も改善しない。時に血便や皮膚症状(蕁麻疹,紅潮,蒼白)や呼吸器症状(喘鳴)といった多臓器症状を合併することがある2)。ガラクトース血症は,新生児マススクリーニング検査に含まれている疾患であり,血中のガラクトース濃度が高値となる。

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