No.4716 (2014年09月13日発行) P.15
長尾和宏 (長尾クリニック)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-03-24
がん対策の目玉は、言うまでもなく早期発見・早期治療である。私が診ている患者さんの中にも最近、大腸がんを発見、専門病院で腹腔鏡手術を受け完治と言われた人がいる。同様に、胃がん、食道がん、腎臓がん、肺がん、乳がん、前立腺がんなどでも早期治療で助かった症例をたくさん経験した。町医者でもやる気になれば早期発見・早期治療は充分可能だと思っている。肝臓と肺に転移があるステージⅣの大腸がんでも、抗がん剤と外科手術で10年後も再発がなく完治した人もいる。こうしたがん医療の進歩に驚いている。
ちなみに動物の中で人間だけががんになりやすい。現在日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死んでいるのは紛れもない現実。がんはもっともありふれた病気だ。しかし無症状の外来患者さんに、がんの話題を日常の生活習慣病診療の中で切り出すことは意外に難しい。そこで筆者は、テレビで観た「芸能人ががんになった話」をよく話題にする。個人情報の関係で他の患者さんの話はできないが、芸能人の話だけは例外だ。予め臓器別の芸能人がんリストを作り、目の前の患者さんがなりそうながんの闘病記をコピーして渡している。
70歳以下なら、生活習慣病の人こそ、がんの早期発見が大切だと思う。しかしがん検診は保険診療ではできないし自治体からの援助も先細りだ。そんな中、町医者にとって早期発見の武器は腹部エコーや便潜血検査、血清PSA測定などの簡便な検査だ。筆者は産業医としても活動しているが、労働者の定期健康診断にがん検診の項目がないのは寂しい。少しでもがん検診の要素も取り入れて欲しい。
一方、80歳を超えた方には、がん検診を勧めることはない。認知症予防やロコモ対策、転倒予防に力点を置いている。
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