【質問者】
加藤英明 横浜市立大学附属病院感染制御部講師
【ガイドラインでの推奨としては「状況により様々」だが,グラム染色により適切な治療が行える可能性がある】
ATS/IDSAのガイドラインによると,合併症のない外来の市中肺炎には喀痰グラム染色どころか培養も推奨されておらず,moderate以上のエビデンスレベルの治療はアモキシシリン(AMPC)1回1g1日3回となっています1)。最も頻度が高く死亡率も高い肺炎球菌と2番目に頻度が高いインフルエンザ桿菌のみを意識した狭域治療であり,入院の段階で広域抗菌薬に切り替えるという考え方です。これをわが国に当てはめると,肺炎球菌はペニシリン耐性菌の占める割合が高く,インフルエンザ桿菌もBLNAR型というAMPC耐性菌が半数近くになります。わが国ではAMPC投与量が1回0.25~0.5g1日3回と少なく,治療失敗のリスクがあります。喀痰培養1検体当たりのコストも米国平均で58USドル(1ドル110円換算で約6400円)に対してわが国は1600円と安いです2)3)。初期治療が反応不良の際に,起炎菌と薬剤感受性が判明している意義は患者にとって大きいと思います。
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