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小児期から発症する血栓症とその素因

No.5014 (2020年05月30日発行) P.48

市山正子 (九州大学小児科)

石村匡崇  (九州大学小児科助教講師)

落合正行  (九州大学周産期学准教授)

登録日: 2020-05-29

最終更新日: 2020-05-26

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 【遺伝性血栓症の早期診断へ】

日本人小児の血栓症は,遺伝性血栓症が最も多く約20%を占め,その内訳はプロテインC(PC)欠乏50.0%,プロテインS(PS)欠乏16.7%,およびアンチトロンビン(AT)欠乏13.0%である。筆者らは血栓症を発症した21歳未満306人の血栓性素因を解析し,小児期の遺伝性血栓症は,新生児期に頭蓋内梗塞/出血や電撃性紫斑病で発症するPC欠乏症と,学童期以降に深部静脈血栓症で発症するPS欠乏症およびAT欠乏症が多いことを報告した1)。また,小児期は各抗凝固因子の活性が生理的に低く,個人差も大きい。そこで,年齢別にPC,PSおよびATの活性値の下限を,成人活性基準範囲から設定した1)

新生児期は小児期の中で最も血栓症の発症頻度が高い。新生児発症のPC欠乏症は,PC遺伝子の両アレル変異が多いと考えられていたが,筆者らは積極的な遺伝子解析によりヘテロ変異もほぼ同程度に多いことを明らかにした2)。わが国では,遺伝性PC欠乏症に対する活性化PC製剤が保険適用だが,新生児期の診断は特に難しい。筆者らはPCとPSの活性比を利用した,新生児遺伝性PC欠乏症の早期診断法を検討中である3)。指定難病となった特発性血栓症を早期に診断し,適切な治療管理と予防法の確立をめざしている。

【文献】

1) Ichiyama M, et al:Pediatr Res. 2016;79(1-1):81-6.

2) 大賀正一:新生児・小児における特発性血栓症の診断,予防および治療法の確立に関する研究. 難治性疾患克服政策研究事業 平成26~28年度総括研究報告書.

3) Ichiyama M, et al:J Perinatol. 2019;39(2): 212-9.

【解説】

市山正子,石村匡崇 九州大学小児科 *助教講師

落合正行 九州大学周産期学准教授

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