No.4734 (2015年01月17日発行) P.16
長尾和宏 (長尾クリニック)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-03-15
私ごとで恐縮だが昨年末に2冊の本が出版された。『その症状、もしかして薬のせい?』(セブン&アイ出版)と『家族よ、ボケと闘うな!』(役人の近藤誠氏との共著、ブックマン社)の2冊で、それぞれAmazonのお薬部門と認知症部門のベストセラー1位となっている(12月22日現在)。
前者は、高齢者の多剤投与に警鐘を鳴らす本である。歳を取るほど病気の数が増え、それに比例して薬の数も増える。ガイドラインに従って多科受診をすればすぐに10~20種類投薬になる国である。こうした多剤投与は誰が解決するのか。そうした想いで、『「大病院信仰」どこまで続けますか?』(主婦の友社)という本も出版し、「かかりつけ医」の大切さを啓発した1年でもあった。
さて高齢化といえば、認知症の増加である。予備軍を含めて800万人と言われる認知症に対応すべく、がん対策基本法と同様に拠点病院をピラミッドの頂点としたトップダウン方式の認知症施策が国を挙げて遂行されている。本当にそのやり方でいいのだろうか?早期診断、早期治療で誰が一番喜ぶのだろうか?もちろん本人であるべきだが、もしかしたら製薬会社ではないのか?ディオバン事件がまだ記憶に新しいが、抗認知症薬の綺麗過ぎる臨床データに違和感を持つのは私だけだろうか。
識者から高い評価を得ている『認知症の「真実」』(東田勉著、講談社新書)には、「認知症は国と医者が作り上げた虚構の病だった!」とある。東田氏は「かいご学会イン西宮」で毎年顔を合わせる医療ジャーナリストだ。こうした国民の声に日本の医療界はどう応えていくのだろうか。
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