【質問者】
鶴上 浩 医療法人鶴整会鶴上整形外科リウマチ科院長
【骨形成促進薬は骨密度増加と骨折抑制効果に優れる。使いわけの根拠となるデータはない】
骨粗鬆症治療薬の中で,わが国で現在使用できる骨形成促進が主作用である薬剤は,遺伝子組換えテリパラチド(フォルテオⓇ),テリパラチド酢酸塩(テリボンⓇ),ロモソズマブ(イベニティⓇ)です。これらの薬剤は,いずれも骨芽細胞による骨形成を促進して骨粗鬆症の骨量(骨密度)を増加させ,骨強度を改善して骨折を抑制します。適応は,いずれも骨折の危険性の高い骨粗鬆症ですが,それぞれの薬剤に特徴があります。
テリパラチドはヒト副甲状腺ホルモン(PTH)(1-84)の生物的活性部位であるN末端領域(1-34)を骨粗鬆症治療薬としたものです。副甲状腺腫などによって発症する副甲状腺機能亢進症では,持続的なPTH分泌によって骨粗鬆化が進行します。これに対してPTHを間欠的に投与すると骨芽細胞の分化と機能亢進を生じ,骨密度が増加します。テリパラチドには20μgを連日自己皮下注射する「遺伝子組換えテリパラチド」と,週に1回56.5μg皮下注射または週に2回28.2μg皮下注射する「テリパラチド酢酸塩」とがあり,いずれも24カ月投与します。遺伝子組換えテリパラチドとテリパラチド酢酸塩では,動物実験での骨組織変化や臨床試験での骨代謝マーカーの推移に差がみられますが,骨折抑制効果に大きな差はありません。したがって,これら3種類(遺伝子組換えテリパラチド1種,テリパラチド酢酸塩2種)の薬剤選択にあたっては投与間隔,自己注射か医療施設での投与かといった違いを考慮して,それぞれの症例ごとに良好な治療継続率が得られる薬剤を選択することが勧められます。
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