SUMMARY
主治医が職場に向けて診断書・意見書を発行する際には,『疾病性の言葉(例:下痢)』を『事例性の言葉(例:1日5~10回ほど,トイレのために離席の可能性あり)』に翻訳して,就業上の意見を述べることが望ましい。
KEYWORD
がん関連疲労
がん関連疲労はがん治療に伴う体力低下で,身近な人でさえ気づきにくい症状(invisible symptoms)であり,その十分なフォローアップが重要である。
PROFILE
産業医科大学を卒業後,産業医・産婦人科医等として勤務の後,現職。厚労科研「がんと就労」班長,「不妊治療と就労」「心血管疾患と就労」の代表など,治療と就労の両立支援の第一人者。医師,産業衛生指導医等。令和元年度日本医師会医学研究奨励賞など受賞歴多数。
POLICY・座右の銘
「気持ち」こそが世界を変える
先進国共通で,就労世代のがん患者の数は増加傾向にあり,労働者ががんになる確率が上がっている。その理由は,①シニアの就労人口の増加,②女性の就労人口の増加,③女性のがん,特に乳癌の罹患率の増加,子宮頸癌の発症年齢の若年化,④がん患者の生命予後の改善に伴い,職場復帰できる状態のがん患者が増加している,という4つの原因がある。
筆者である遠藤ら(Journal of cancer survivorship 2015)は,わが国で初めて,がん罹患社員1278人の復職に関する大規模なコホート研究を実施した。がん罹患社員が病休となった場合,フルタイムで復職までに要した日数はがん全体で201日(約6カ月半)で,がん種ごとに大きく異なっていた。「がん種ごとの復職までかかる平均日数」は,胃癌は124日,大腸癌は136.5日,乳癌209日,子宮癌等が172日,前立腺癌等は124.5日であった。