病原体の経口感染により,嘔吐,下痢を主症状とする感染症である。小児の下痢の原因はほとんどがウイルス性となり軽症化している。ウイルスではロタとノロが大部分を占め,そのほかアデノ,エンテロ,サポ,アストロなどがある。細菌ではカンピロバクター,病原性大腸菌,サルモネラ,エルシニア,腸炎ビブリオなどがある。ロタは生後6カ月~2歳に多く5歳までにほとんどが感染し,冬~春に多い。2011年より任意予防接種が始まり,ロタによる胃腸炎は減少傾向にある。ノロは全年齢で感染し,秋~春に多い。
①発症時期,②下痢の回数と性状,血便の有無,便臭,③体重減少の有無,④家族内や集団生活での有症状者,⑤食物摂取歴(生に近い調理の牛肉・鶏肉・鶏卵・二枚貝など),⑥海外渡航歴,⑦ペットの飼育(動物・爬虫類・鳥類)などを問診で確認する。
便性は,白色調の水様便ではウイルス性,血便ではカンピロバクター,腸管出血性大腸菌(EHEC),サルモネラなどを考える。EHECで激しい腹痛がある場合は,溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併することが多い。
感染源は,カンピロバクターは鶏肉,サルモネラは鶏卵・鶏肉・ペット,EHECは生肉が多い。
迅速検査はロタ,アデノ,ノロが可能で,ノロは3歳未満が保険適用になっている。細菌性が疑われる場合は便培養を実施する。
脱水の評価とその治療が大切である。体重測定を行い病前と比較し体液喪失量を計算し,皮膚のツルゴール,口腔内の乾燥,流涎の有無,意識レベルや活動性,最終排尿,尿量減少の程度などから脱水の評価を行う。
基本的な治療は適切な経口補液療法,食事療法,乳酸菌製剤である。
嘔吐は半日~1日で治り,下痢の多くは2~3日で軽快するが,7~10日間続くこともある。
食事療法:嘔吐がある場合は,絶食にして経口補液を少量ずつ与える。腹痛が強いときも食事を制限する。食事は消化のよい炭水化物から始める。ミルクの稀釈は必要ない。
制吐薬:錐体外路症状や心電図異常など,副作用に注意が必要である。
止痢薬:下痢は腸管内の有害物を体外へ排泄する生体防御反応であるため,強力な止痢薬は投与しない。乳酸菌製剤以外は排菌を遅延させる可能性があり,推奨されない。
抗菌薬:細菌性では抗菌薬投与が必要か判断する。
乳幼児では急性下痢に引き続き二次性乳糖不耐症になることがあり,酸臭のある水様便である。母乳以外は乳糖を含まない食物を与え,粉乳を与える場合は無乳糖ミルク,大豆乳を使用する。
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