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白内障が高齢者の認知機能に及ぼす影響について

No.5025 (2020年08月15日発行) P.52

五味 文  (兵庫医科大学眼科学教室主任教授)

緒方奈保子  (奈良県立医科大学眼科学教室教授)

登録日: 2020-08-14

最終更新日: 2020-08-06

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  • 白内障は加齢に伴って進行し,QOV(quality of vision)を低下させます。白内障が高齢者の認知機能にも関与している可能性について,疫学研究の成果をまとめられた奈良県立医科大学・緒方奈保子先生に,詳細を教えて頂きたいと思います。

    【質問者】

    五味 文 兵庫医科大学眼科学教室主任教授


    【回答】

     【白内障があると,認知機能低下のリスクが高くなる】

    認知症の誘因のひとつとして,加齢に伴う視力障害,聴覚障害などによる感覚刺激の低下が考えられています。筆者らが行った高齢者の疫学調査より,視力が悪いほど認知症が増え,認知症判定のMini Mental State Examination(MMSE)スコアは視力と相関することがわかりました。認知症のリスクは,視力がlogMAR 0.1悪化するごとに約2倍ずつ上がります。良いほうの目の視力が少数視力0.7(運転免許証習得に必要な視力)未満である場合,認知症のリスクは約2.4倍高くなります。

    高齢者の視力障害の原因として,白内障は最も多い疾患です。白内障と認知症の関係について,白内障手術群と白内障群で視力を含む因子を調整し分析した結果,白内障手術と認知症の間に有意な関連性は認められませんでした。しかし,白内障手術群では軽度認知機能低下(mild cognitive impairment:MCI)が少ないことがわかりました(OR=0.79)。白内障手術で認知症は防げませんが,MCIのリスクは2割程度低下します。これは視力の因子を除外した結果であるため,視力とは関係なく白内障手術によってMCIが予防できることを意味します。

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