心室中隔に欠損孔を有する疾患である。大きな欠損孔で乳児期より心不全・呼吸不全を呈する症例から,小さな欠損孔で生涯無症状な症例まで様々である。アジア人は大動脈弁直下の欠損が多く,大動脈弁逸脱から閉鎖不全を惹起する症例には注意が必要である。感染性心内膜炎の中等度リスクである。
心臓超音波検査による欠損部位の同定は重要である。
新生児期・乳児期早期には,胎生期の影響でまだ肺血管抵抗が高く,大きな欠損孔であっても短絡量は多くないが,肺血管抵抗の低下とともに肺血流が増加し,呼吸障害を呈する。短絡量の多い症例は手術治療が基本となる。
出生後心雑音を契機に診断された症例は1カ月検診時に再診とする。このとき,努力性呼吸・多呼吸・体重増加不良(目安は体重増加30%未満)がある症例,また胸部X線で心拡大・肺血流増加(肺動脈拡大)・左房拡大,心電図で右室肥大・左室肥大,心臓超音波検査で右室圧の上昇(目安は左室圧の半分)・左室拡大(目安は左室拡張末期径25mm)・左房拡大といった所見のみられる症例では,乳児期に手術介入が必要な可能性を考慮し1カ月ごとのフォローアップとする1)。肺うっ血による呼吸障害を認める症例では,利尿薬を開始する(フロセミド+スピロノラクトン各1mg/kg/日程度より)。呼吸器感染症は呼吸不全・心不全の増悪因子であるため,家庭内の手洗い・うがいを励行しパリビズマブ投与を開始する。生後3~4カ月の肺血管抵抗がおおむね下がる時期まで自然閉鎖傾向を認めなければ,手術治療を考慮する。低出生体重などで体格の問題がなければ一期的に心内修復術を行う。体格が小さい,呼吸器感染やRSウイルス感染症後で体外循環が難しい状況だが高肺血流がコントロールできない場合は肺動脈絞扼術を行い,状態が安定した後に心内修復術を行う。
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