有棘細胞癌(皮膚扁平上皮癌)は,表皮角化細胞由来の悪性腫瘍である。病理組織像では,程度の差はあれ,表皮有棘層に類似した分化能を持つ異常細胞が真皮内へ浸潤する。異常細胞が表皮内に限局していれば日光角化症(光線角化症)であることから,本稿では日光角化症についても述べる。
高齢者の顔面や手背などの露光部に,徐々に増大する紅色腫瘍を呈することが多い(図)。非露光部では,瘢痕,慢性放射線皮膚炎,慢性炎症が発生母地となり,発生母地での難治な潰瘍で初発することが多く,後に腫瘍を形成する。
高齢者の露光部に軽度隆起する紅斑性局面を呈する。疣状や角状に隆起することもある。放置すると有棘細胞癌へ進展する可能性がある。
有棘細胞癌と日光角化症はともに,腫瘍の部分生検の病理組織像により診断を確定する。日光角化症において,部分生検の病理組織像のみで有棘細胞癌を否定できない場合は,外科的全切除による病理組織像により診断を確定する。
外科的切除が基本であり,まず高リスク群,低リスク群のいずれに該当するかを判断する。下記の1つでも該当する場合は高リスク群とし,1つも該当しない場合のみ低リスク群とする1)。
発生部位と直径:顔(頰・額以外)・陰部・手足で6mm以上,頭・頰・額・頸部・前脛骨部で10mm以上,体幹・四肢(前脛骨部,手足を除く)で20mm以上
臨床所見:放射線照射部位や慢性炎症が発生母地,免疫抑制状態,再発例,急速な増大,境界不鮮明,神経症状あり
組織学的所見:中~低分化,adenoid, adenosquamous, desmoplastic type,深達度がレベルⅣ(網状層に侵入)以上,腫瘍厚が2mm以上,神経・脈管浸潤
リンパ行性に転移することがあり,所属リンパ節腫脹の有無を触診し,転移が疑われる場合は超音波やCTなどの画像検査を行う。
リンパ行性転移が確認されれば,PET/CTや造影CTなどで遠隔転移の有無を確認する。リンパ行性転移が確認されない場合,血行性転移は稀であることから,症例ごとに遠隔転移の有無を検査すべきかどうか判断する。
転移の可能性はなく,原発病変に対して,症例の年齢,状態や病変の部位,数,性状などにより,外科的切除,凍結療法,イミキモド外用,フルオロウラシル軟膏外用などの治療法を選択する。
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