視神経萎縮は,種々の要因により視神経を含む視路が不可逆的な萎縮を起こして視神経乳頭が蒼白になった状態を言う。その成因として,①球後の視路の障害により乳頭が蒼白化した単性視神経萎縮,②視神経乳頭炎やうっ血乳頭など乳頭腫脹を起こす病変をきたした場合に起こる,乳頭表面にグリアの増生を伴った萎縮(炎性視神経萎縮),③視神経乳頭上に深くスロープの急峻な陥凹が上下方向に拡大し,乳頭辺縁部の上下耳側にノッチが形成される緑内障性視神経萎縮,④網膜変性疾患や網膜循環障害など,網膜神経節細胞の障害に起因する網膜性視神経萎縮,などが挙げられる。場合によっては急激な発症から,短期間で視神経萎縮に至ることもある。
通常,検眼鏡的に視神経乳頭の萎縮を判別するが,光干渉断層計(OCT)で視神経乳頭を解析(乳頭周囲神経線維層厚解析)して萎縮を判定する方法がより確実である。視神経萎縮は,主に上記①~④の原因に起因するため,まず視神経萎縮に至った原因を探る必要がある。
単性視神経萎縮は,球後の視路の障害により視神経乳頭が蒼白化し,浅い陥凹,表在血管の狭細化がみられる。これは,視神経病変部からの逆行性の神経線維の脱落によるものであり,他の視神経乳頭の解剖学的構造は基本的に保たれている。また,中毒性視神経症や薬物性視神経症,Leber遺伝性視神経症などの遺伝性視神経症でも,単性視神経萎縮をきたす場合があるため,詳細な問診を行い,除外診断を確実に行うことで,ステロイド治療などの不要な治療を防ぐことができる。
炎性視神経萎縮は,乳頭表面にグリアの増生を伴った萎縮が起こり,視神経乳頭血管の狭細化や白鞘化を伴う。
通常,緑内障性が視神経萎縮のうちで最も多くみられるが,検眼鏡だけでは単性視神経萎縮との鑑別が難しい。また,単性視神経萎縮は視路の異常が原因で起こりうるため,鑑別が難しい視神経萎縮は,MRIなどで視路への圧迫性病変を除外しておくことが重要である。さらに,緑内障性視神経萎縮と他の視神経萎縮の鑑別には,OCT画像や視野障害の緑内障性障害パターンと併せて判定する。
網膜性視神経萎縮は,広範な網膜細胞の壊死によって視神経軸索の変性が順行性に生じ,視神経乳頭はワックス様黄白色を呈する。
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