治療前の予後因子を評価するために,白血病細胞の染色体核型と遺伝子プロフィールが明らかになるまでの1~2週間治療を遅らせることは,高齢者で,特に白血球減少のみられる症例では問題とならないことが明らかにされている
急性骨髄性白血病(AML)では,初期診断として,寛解導入療法の決定のために形態および細胞表面形質解析によってFAB分類のサブグループを診断する
完全寛解到達後の長期の治療計画のために,さらに詳細な最終診断を行う
染色体の核型と遺伝子異常の検出が,診断および予後予測において重要である。最終診断は,主に分子病態に基づくWHO分類と,予後層別化が可能なELN分類などをもとに行う
高齢者の急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)と言うとき,一般的には60歳以上のAMLを指すことが多い。しかし,わが国では,成人白血病治療共同研究機構(Japan Adult Leukemia Study Group:JALSG)による臨床研究(2276例)の全生存率(overall survival:OS)を解析した結果,50~54歳,55~59歳,60~64歳の各年齢層のOSに差がなかったことから,65歳以上を高齢者AMLとすることが多い1)。
高齢者AMLは,予後不良の遺伝子変異やエピジェネティック異常,薬剤耐性機構,血液疾患や化学療法あるいは放射線療法の既往など,治療抵抗性の性質を有するAMLサブタイプが多く2),難治性であることが多い。また,高齢者は若年者に比べて強力な化学療法に対する忍容性が劣り不耐容であり,治療関連死亡が多いため,適切な治療選択につながるように詳細な診断を行うことが重要である。
治療前の予後因子を評価するために,核型と遺伝子プロフィールが明らかになるまでの1~2週間治療を遅らせることは,高齢者で,特に白血球減少のみられる症例では問題とならないことが明らかにされている3)4)。そこで,その間にAMLのサブタイプを診断するとともに,患者側の状態を調べて,治療選択に役立てる。
AMLでは,初期診断としてまずAMLであることを診断し,寛解導入療法の決定のために形態および細胞表面形質解析によってAMLのFAB(French-American-British)分類5)~7)のサブグループを診断する。また,化学療法の強度を決定する際の参考にするために,患者側の要因,すなわち心機能や合併症などを調べて,化学療法に対する忍容性を評価する(特集2を参照)。その後,寛解後療法,すなわち完全寛解到達後の長期の治療計画のために,さらに詳細な最終診断を行う。最終診断は,主に分子病態に基づくWHO分類8)と,予後層別化が可能なELN(European LeukemiaNet)分類9)などをもとに行う。