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「社会的処方」~病院の取り組み事例─岩手県一関市・藤沢病院の場合[プライマリ・ケアの理論と実践(82)]

No.5040 (2020年11月28日発行) P.12

佐藤元美 (一関市病院事業管理者)

登録日: 2020-11-26

最終更新日: 2020-11-25

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SUMMARY
解決すべき課題の性質を考えたい。それに適した解決法と解決法に至るコミュニケーションを模索したい。診察室に持ち込まれる課題をすべて診察室で解決しようとすると当然無理がある。無理をするとコミュニケーションが歪む。診察室も社会の一部で,患者の周りには広く社会が広がっている。

KEYWORD
「社会的処方」の実践の可能性と困難さ
「社会的処方」という言葉は,医療界の流行語になりつつある。日本とは異なる医療制度,文化の中で実践が積み重ねられてきた。参考にすべき点は多いが,その実践は困難である。

佐藤元美(一関市病院事業管理者)

PROFILE
1979年3月自治医科大学医学部卒業。79年から91年まで岩手県立病院勤務。93年藤沢病院長。2011年一関市病院事業管理者。

POLICY・座右の銘
忘己利他

1「社会的処方」の概念を知る以前に経験した ケース

どう考えればよいのか?
80歳ぐらいの女性,1年以上の入退院を繰り返し,診断も治療も少し難しい病気が治り,診療終了となった日。一人暮らしだという彼女は私を見つめながら次のようなことを語った。

「よそで診断できなかった病気を見つけて,治してもらって,感謝していると先生は思っているでしょう?でもね,本当は感謝していない。体は元気になって,車の運転もできるし,時間もあるけど,行くところも,することもないの」

診察室のドアは閉じたままだったが,ドアの外に退屈な生活が見えた。地域包括支援センターの保健師に連絡を取り,そこで相談して頂くことにした。センターでは町内の様々なボランティア活動や交流会の情報を把握している。

その後,その患者さんは受診しておらず,お会いもしていない。印象的な事例だ。

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