成人の流涙症にはアレルギーやドライアイなど分泌機能亢進による分泌性流涙と,鼻涙管閉塞や眼瞼疾患に伴う導涙機能低下による導涙性流涙がある。両者を鑑別して加療することがとても重要である。
鼻涙管閉塞による流涙は随時認め,時に膿分泌を伴うこともある。長期間の接触などによりかぶれてしまい,眼瞼縁炎を呈することも少なくない。また,流涙が強いと視力低下の原因にもなる。
鼻涙管閉塞を診断するには通水検査(涙洗)を施行するが,まずは細隙灯顕微鏡検査をする必要がある。涙液メニスカスの高さを確認する。次に上下の涙点の形状を確認し,涙点閉鎖の有無を診断する。涙点閉鎖がなければ通水検査を施行する。生理食塩水を用いて涙洗針により通水する。鼻腔への通水がなければ鼻涙管閉塞と診断できる。
涙道は涙点,涙小管,涙囊,鼻涙管,鼻腔へと続く細い管である。この部位のいずれか,もしくは全体が閉塞することを総じて鼻涙管閉塞と呼ぶ。通水検査や涙道造影,涙道内視鏡検査などから鼻涙管閉塞と診断したら,涙管チューブを挿入留置する。わが国ではヌンチャク型の涙管チューブを使用することが多い。
涙管ブジーを用いて鼻涙管開放の道筋を形成してから留置することが一般的であるが,涙道内視鏡を用いて留置したほうが確実である。涙管チューブ留置後は点眼,眼軟膏と内服薬を処方する。
涙管チューブを留置する際に点眼麻酔のみで施術されることが多いが,点眼麻酔のみでは患者が受ける疼痛は強いため,ブロック麻酔を併用したほうがよい。
ブロック方法は滑車下神経ブロックと眼窩下神経ブロックを併用する。麻酔液は2%Eなし(エピネフリンなし)のキシロカイン®(リドカイン)を選択する。Eありは動脈閉塞を起こす危険性があるので,使用を避ける。
麻酔に使用する針は27G,1/2針を使用する。針長が長いと動脈損傷に至り球後出血を起こす危険性がある。
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